スクラム開発におけるストーリーポイントの決め方を紹介

スクラム開発では、スプリントごとにタスクの規模を正確に見積もることがプロジェクトの成否を左右します。しかし、作業時間での見積もりは個人のスキルに依存しやすく、チーム内での認識のずれや計画の遅延につながりがちです。

そこで注目されているのが、タスクの規模を相対的に評価する「ストーリーポイント」という単位です。時間ではなくチーム共通の物差しを用いることで、客観的で精度の高い見積もりを目指しましょう。

本記事では、ストーリーポイントの基本的な考え方から、導入するメリット、具体的な決め方の手順までを詳しく解説します。

スクラム開発におけるストーリーポイントとは?

スクラム開発では、一般的に1〜2週間程度の短い期間に区切って開発を繰り返します。この開発手法では、各タスクの規模をチーム全体で正確に把握することが求められます。そのために用いられるのが、「ストーリーポイント」というタスクの大きさを相対的に示す見積もり単位です。

ここでは、スクラム開発の概要と、ストーリーポイントの基本的な考え方を解説します。

スクラム開発とは?

スクラム開発は、アジャイル開発という考え方を実践するためのフレームワークの一つです。ラグビーで選手が肩を組む陣形「スクラム」が名称の由来であり、チーム一丸となって開発を進める点が重視されています。

計画から実装、テストまでを機能単位に区切り、短い期間で開発サイクルを繰り返す点が特徴です。この開発サイクルは「スプリント」と呼ばれます。スプリントを繰り返すことで仕様変更に柔軟に対応できるほか、開発の手戻りを少なくできる点がメリットです。プロダクトオーナーやスクラムマスターといった役割を明確に分けることで、チームの生産性向上につながります。

ストーリーポイントとは?

スクラム開発で用いられる、タスクの規模を示すための見積もり単位です。特定の時間で作業量を見積もるのではなく、タスク同士を比較して相対的な大きさで評価する点が特徴です。

ストーリーポイントの見積もりは主に「工数」「複雑さ」「不確実性」という3つの要素から総合的に判断されます。時間という絶対的な指標から離れることでチーム共通の物差しとして機能し、一貫性のある評価基準が確立されます。

スクラム開発においてストーリーポイントを決める必要性

ストーリーポイントは、時間という絶対的な指標ではなく、相対的な大きさでタスクを見積もる手法です。一見、複雑に思えるかもしれませんが、ストーリーポイントを用いることには、プロジェクトの進捗管理が容易になる、見積もりの精度を高められるといったメリットがあります。

ここでは、スクラム開発でストーリーポイントを決める具体的な必要性について解説します。

プロジェクトを効率よく管理できる

ストーリーポイントを用いると、プロジェクト全体の進捗を効率よく管理できます。チームが1回のスプリントで完了できるストーリーポイントの合計値は「ベロシティ」と呼ばれます。

例えば過去数回のスプリントで計測したベロシティの平均値が「30」だった場合、チームは次のスプリントでもおよそ30ポイント分のタスクを完了できると予測が可能です。ベロシティを基準にすることで将来の計画が立てやすくなり、プロジェクト全体の進捗管理の精度が向上します。

タスク量を把握できる

時間で見積もりを行う場合、個人のスキルや経験によって評価に大きな差が生まれてしまいます。ストーリーポイントは、スキル差による見積もりのぶれをなくすための仕組みです。「プランニングポーカー」などの手法を用いて見積もりを行う過程では、各メンバーがタスクの複雑さや不確実性について意見を交わします。

見積もり時の対話を通じてタスクへの理解が深まり、チーム全体で作業規模に対する共通認識を形成できるため、個々のタスクの大きさをより客観的に把握できます。

見積もり精度がアップする

時間で見積もりを行うと、心理的なプレッシャーから過小・過大な数値を報告してしまうことがあります。

ストーリーポイントは、時間という具体的な単位から離れてタスクの規模を評価する手法であるため、メンバーはより客観的な視点で判断しやすくなります。

また、見積もりの過程で各々が持つ見解を共有し議論することで、一人では気付けなかったリスクや課題を事前に発見できるため、チーム全体として見積もりの精度そのものが向上します。

ストーリーポイントを決める手順

スクラム開発におけるストーリーポイントの決め方を紹介

よりストーリーポイントの効果を引き出すためには、正しい手順での導入と運用が必要です。まずはチーム全員で基準となるタスクを設定し、基準タスクとの比較で他のタスクを見積もっていきます。ストーリーポイントを実際に決めていくための具体的な手順を、4つのステップに分けて解説します。

ストーリーポイントを導入する

ストーリーポイントを導入する最初のステップは、チームで「基準タスク」を一つ設定することです。基準タスクとは、他のタスクの規模を相対的に見積もる際の、物差しとなるタスクを指します。

基準タスクには、チームのメンバー全員が作業内容や規模感をよく理解している、シンプルで分かりやすいものを選ぶことが重要です。共通の基準を最初に定めることでチーム内の認識のずれを防ぎ、一貫性のある見積もりが可能です。

数列を決定する

基準タスクを設定したら、次は基準タスクに割り当てる基準ポイントと、見積もりに使用する数列を決定します。一般的には「1、2、3、5、8、13……」と続くフィボナッチ数列が広く用いられます。

フィボナッチ数列は、数字が大きくなるほど数字同士の間隔が広がるため、タスク規模の差を直感的に表現しやすい点が特徴です。例えば基準タスクに「3」ポイントを割り当てたとします。他のタスクを評価する際、基準タスクの2倍程度の規模であれば「5」や「8」を選ぶ、といった具合に見積もりを進めます。重要なのは数値そのものではなく、タスク間の規模の比率をチームで合意することです。

マトリクスを作成する

見積もりの基準をチームで共有した後、円滑な作業に移るためには、評価軸を定めたマトリクスの作成が有効です。例えば縦軸に「技術的な複雑さ」、横軸に「作業量(工数)」といった、ストーリーポイントを判断する要素を設定します。

チームで合意した基準タスクをマトリクス上の適切な位置に配置し、次に他のタスクを基準タスクと比べながら相対的な位置を決めていきましょう。この作業をチーム全員で行うと、各タスクの規模感を視覚的に捉えやすくなります。

スプリントを計画・実行する

各タスクのストーリーポイントを見積もったら、次はスプリントの計画を立てる段階です。スプリントプランニングとも呼ばれ、開発対象の機能リストであるプロダクトバックログから、今回のスプリントで着手するタスクを選び出します。

タスクを選択する際、過去のスプリント実績から算出されたチームのベロシティを考慮することが重要です。この客観的な指標を目安に対応可能なタスク量を見極めることで、無理のない計画立案が実現します。計画後はスプリントを実行し、開発を進めていきます。

スクラム開発を円滑化し、プロジェクトを推進しよう

スクラム開発で用いられるストーリーポイントは、タスクの規模を相対的に見積もる単位です。ストーリーポイントを活用すると、プロジェクトの進捗管理が効率化し、見積もりの精度も向上します。導入にあたっては、基準タスクの設定やフィボナッチ数列の活用など、適切な手順を踏むことが大切です。

株式会社SPでは、スクラム開発をはじめとする柔軟な開発スタイルに対応し、企画から運用まで一気通貫でサポートします。豊富な開発経験を基に、お客様の状況や課題に合わせたソリューションをご提案することが可能です。スクラム開発の導入やプロジェクトの進め方でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。