
プロダクト開発において、リリースのタイミングを見極めることは重要です。しかし、判断基準が曖昧なままでは、担当者によって判断がぶれたり、品質に問題のあるプロダクトを市場に出してしまったりするリスクが高まります。
そこで重要になるのが、明確な「リリース判定基準」を設けることです。チーム全体で合意した基準を持つことで、プロダクトの品質を客観的に評価し、自信を持ってリリースできるようになります。
本記事では、リリース判定の意味から、判定における具体的な基準、そして基準を決めるときのポイントについて解説します。
リリース判定とは?
リリース判定とは、開発したプロダクトを市場に提供しても良いかを見極めるためのプロセスのことです。リリース判定では、一定の品質を満たさないプロダクトの出荷を防ぎ、客観的な基準でリリース可否を決めることが大切です。判断の際には、テストの結果といった技術的な観点だけでなく、ビジネス面での準備状況も考慮されます。
リリース判定を適切に行うためには、あらかじめ条件を定めたリリース判定基準書を作成することが効果的です。関係者全員が合意できる明確な基準を持つことで、属人的な判断を避け円滑な意思決定が可能となります。
リリース判定における基準
リリース判定を客観的に行うには、明確な基準が不可欠です。ソフトウェアの品質を多角的に評価するため、「テスト品質」「残存バグ」「プロダクト品質」「プロセス品質」という4つの観点から基準を設定します。4つの基準を一つでも下回る場合はリリースを承認しないというルールを設けることが重要です。
テストにおける品質
テスト品質は、リリース判定における重要な基準の一つです。この品質は、テストの量や種類が十分か、計画通りに実施されたかといった観点から評価されます。
また、テスト中に発見されたバグの状況も、テスト品質を判断する上で重要です。テストの進捗が計画から遅れている場合、テストの進行を妨げる重大なバグが存在する可能性を示唆しています。テストの実施状況そのものがプロダクト全体の品質を測る指標です。
バグによる影響
プロダクトからバグを完全になくすことは現実的ではありません。そのためリリース判定では、残存しているバグが市場に与える影響度を評価することが重要です。バグの影響度をあらかじめ評価し、バグが許容できる範囲内であるかを判断する基準が求められます。
例えば、サービスの根幹に関わらない軽微なバグであれば、リリースを許可するという判断も必要です。残存バグが事業に与える影響を見極めることが、品質を判断する上での一つの基準です。
プロダクトの品質
プロダクト品質とは、設計書やソースコードなど、開発における成果物自体の品質を指します。プロダクト品質は、開発プロセスの各段階で作成されるドキュメントやプログラムコードの質によって決まります。
例えば、設計レビューでの指摘事項の数や、テストで検出されたバグの密度などが評価の指標です。これらの客観的なデータが、プロダクトそのものが基準を満たしているかを判断する材料となります。
プロセスの品質
プロセス品質とは、プロダクト開発に用いられた手順そのものの品質を指します。プロセス品質は、設計や実装といった「直接プロセス」と進捗管理や課題管理などの「管理プロセス」の2種類に分けて評価されます。
評価のポイントは、採用された開発プロセスが適切であり、かつ計画通りに実行されたかどうかです。定められた手順が守られていない場合、成果物であるプロダクトの品質にも問題が含まれる可能性が高まります。そのため、開発プロセス自体の品質も、リリース可否を判断する重要な基準です。
リリース判定基準を決めるときのポイント

リリース判定の基準を決める際は、チーム全体で方針を共有し、同じ目標に向かう意識を持つことが大切です。その上で、具体的な判定項目を定め、定期的に振り返りを行うことで、基準そのものを改善していく視点も求められます。
全体的な方針を決めておく
リリース判定の基準を設ける前に、チームとしての方針や原則を固めておくことが重要です。方針を固めることで開発に関わるメンバー全員が共通の価値観を持ち判断のブレを防げます。
例えば、「やらないこと」を明確に定めたり、不測の事態に備えた対応計画を事前に定めたりすることが方針に含まれます。全体的な方針があることで個別の基準を検討する際の土台となり、チームの一体感を高めることにもつながるでしょう。
目的を共有しておく
プロダクトをリリースする目的は、開発チーム全体で明確に共有しておくことが重要です。プログラマーやテスターだけでなく、プロダクトマネージャーなど、開発に関わる全てのメンバーが同じ目標を理解する必要があります。
目的が共有されることで、各メンバーは自身の役割でどう貢献すべきかを意識し、主体的に行動できるようになります。共通認識を持つことが、チームとしての自信やリリース判断の精度を高める基盤となるでしょう。
振り返りの時間を確保する
リリース判定の基準を形骸化させないためには、定期的に振り返りの時間を設けることが大切です。
例えばアジャイル開発において、開発期間のサイクルごとに振り返りを行うことなどが挙げられます。振り返りの場でチームの状態を客観的に評価し、開発プロセスや判定基準自体の改善を続けることが大切です。
また大規模なリリースの場合は、事前リハーサルで振り返りを行うのもおすすめです。試行錯誤を繰り返すことが、チームにとって良いリリース基準を形成していくことにつながります。
具体的な判定基準を決めておく
チームの方針に加え、判断の根拠となる具体的な項目を定めておくことも重要です。例えば、リリース作業のタスクを網羅したチェックリストや、問題発生時のロールバック判断基準などが挙げられます。
また、テスト品質や残存バグの許容レベルといった、品質に関する数値的な指標を設定することも有効です。設定する基準には技術的な項目だけでなくビジネス面の準備状況も加えることが望ましいでしょう。明確な基準を事前に合意しておくことで、リリース可否の判断を迅速に行えます。
プロダクトのリリース判定基準を明確にしておこう!
プロダクトのリリース判定とは、客観的な基準に基づいて市場投入の可否を判断する重要なプロセスです。その基準には、テストやバグ、プロダクト自体、そして開発プロセスといった多角的な品質評価が求められます。チームで目的を共有し、具体的な基準を定めて定期的に見直すことが、判定の精度を高めることにつながるでしょう。
株式会社SPは、企画から開発まで一気通貫でサポートしており、リリース判定基準の策定といった上流工程からご相談いただけます。豊富な開発経験を基に、お客様の状況に合わせた品質管理やリリース計画の立案が可能です。プロダクトの品質やリリース判定の進め方にお悩みの担当者様は、ぜひ一度お問い合わせください。