
システム開発において、リリース後のトラブルは事業に大きな影響を与えます。「リリースしてみたら、想定外の不具合が発生した」といった事態を避けるためには、事前の入念な準備が不可欠です。
リリース後のトラブルを防ぐために重要となるプロセスが、プロダクトを市場に公開する前の「リリース判定」です。明確な基準に基づいて品質を客観的に評価することで、ビジネス上のリスクを大幅に低減できます。
本記事では、リリース判定が必要とされる理由や、具体的な判定プロセスの流れについて分かりやすく紹介します。
リリース判定が必要な理由

プロダクトを市場に公開する前には、リリース判定が不可欠です。ここでは、リリース判定が必要とされる具体的な理由を4つの観点から解説します。
品質を保証するため
リリース判定の主な目的は、プロダクトが定められた品質基準を満たしているかを客観的に評価し、保証することです。品質の低いプロダクトをリリースしてしまうと、ユーザーの信頼を失うだけでなく、ビジネス機会の損失にも直結します。
そのため、リリース判定では、機能が仕様書通りに動作するかどうかや、操作性の問題を厳格にチェックします。セキュリティ上の脆弱性や、パフォーマンスに関する重大な不具合が存在しないかの確認も必要です。厳密な検証プロセスを経ることで、利用者に価値を提供できる高品質なプロダクトを市場に送り出せます。
スムーズなデプロイを実現するため
リリース判定は、開発したプロダクトを本番環境へスムーズに展開する「デプロイ」を実現するためにも不可欠なプロセスです。明確な判定基準や手順がないままデプロイを進めると、準備不足による混乱や作業の手戻りが発生しやすくなります。
デプロイ計画を事前に検証しておけば、開発担当者から運用担当者まで、全ての関係者がリリース内容について共通の認識を持つことが可能です。事前の合意形成と計画的な準備によってデプロイ作業が円滑に進めば、安定したサービス提供の土台を築けるでしょう。
トラブルを事前に予測するため
プロダクトをリリースした後に起こり得るトラブルを事前に予測し、その影響を抑えることもリリース判定の重要な役割です。
新しい機能を追加したり、システム環境を変更したりすると、既存の機能に意図しない影響(リグレッション)を及ぼす場合があります。リリース判定の過程で行われる総合的なテストは、このような潜在的な不具合やリスクを事前に発見するための重要なステップです。
例えば、特定の条件下でのパフォーマンス低下や、外部システムとの連携における問題点などを事前に特定することが可能です。想定されるリスクを洗い出して事前に対策を講じておくことで、リリース後の重大な障害発生を事前に防げます。
運用を安定させるため
リリース判断は、プロダクトの公開後の運用を安定させるためにも欠かせません。安定して運用を続けるためには、運用チームがプロダクトの仕様や変更点などを正確に理解していることが重要です。
仕様書やマニュアルなどのドキュメントは、開発チームから運用チームへ情報を正確に引き継ぐための重要な資料です。ドキュメントが適切に整備されていれば、日々の運用業務を効率化できるだけでなく、ユーザーからの問い合わせ対応や障害発生時の原因特定・復旧作業の迅速化にも役立つでしょう。
開発段階でのリリース判定において、これらドキュメントの品質と完全性を評価することは、長期的な製品運用の成功を左右する重要な要素となります。
リリース判定の基本的な流れ
プロダクトの品質を確保し、スムーズな公開を実現するためには、基本的な手順に沿ってリリース判定を進めることが重要です。ここでは、リリース判定における基本的な5つのステップを解説します。
リリース判定のスケジュールを決める
まず、リリース判定会議の開催日時や、リリース判定に関わるタスクのスケジュールを具体的に決めます。この段階では、リリースの最終目標日から逆算し、各工程に必要な期間を割り当てていくことがポイントです。
具体的には、テスト期間、不具合の修正期間、最終確認の期間などを設定します。決定したスケジュールは関係者全員で共有し、合意形成を図りましょう。
コードの最終確認を行う
次に、リリース対象となるプログラムのソースコードを最終的に確定させる「コードフリーズ」を実施します。コードフリーズとは、コードフリーズ後は原則として新たな機能追加や仕様変更を行わない状態にすることです。コードを固定することで、テスト中に仕様が変更されて検証が無駄になる、といった事態を防ぎます。
コードフリーズ後は、テストで発見された不具合の修正のみに限定してコードの変更を許可します。修正範囲を限定することで、テストの品質と信頼性を確保し、リリース対象のプロダクトを安定した状態に保てるでしょう。
テストと修正を実施する
確定したコードを基に、プロダクトが仕様を満たしているかを確認するため、総合的なテストを実施します。総合テストでは、機能の正常な動作だけでなく、システムの性能やセキュリティ、使いやすさなど、多角的な観点から検証を行います。
テスト中に不具合が発見された場合は、開発チームによる迅速な修正が必要です。その後、修正が正しく行われたか、また修正によって新たな不具合が発生していないかを確認する「リグレッションテスト」を再度実施することが重要です。このサイクルを繰り返すことで、プロダクトの品質が着実に向上します。
本番環境におけるテストを行う
開発環境でのテストが完了したら、実際にユーザーが利用する本番環境、またはそれに限りなく近い環境で最終テストを行います。このテストの目的は、本番環境特有の設定やデータ量、ネットワーク環境が原因で発生する問題がないかを確認することです。
例えば、本番のサーバー構成でも期待通りのパフォーマンスが出るか、外部システムとの連携は正常に機能するかといった点が検証されます。本番環境で発生しやすい課題を解消しておくことで、ユーザーはリリース直後から安定したサービスを利用できます。
フィードバックを行う
全てのテストが完了したら、リリース判定会議を開き、テスト結果や発見された課題を関係者全員で共有します。この会議において、プロダクトがリリース基準を満たしているかが最終的に判断されます。
リリースが承認された後も、運用を開始してから得られるユーザーの反応や利用データを収集・分析することが大切です。収集したフィードバックを次の開発サイクルに生かすことで、プロダクトは継続的に改善され、その価値が高まっていきます。
リリース判定を徹底してプロダクトの品質を確保しよう!
プロダクトのリリース判定は、品質を保証し、ビジネス上のリスクを回避するために不可欠なプロセスです。明確な基準と計画的な流れに沿って判定を行うことで、手戻りを防ぎ、安定したサービス提供が実現します。リリース判定のプロセスを徹底することで、ユーザーの信頼獲得と事業の成長につながるでしょう。
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