
紙帳票のデータ化のためにOCRを導入したものの、手書き文字の認識精度が低く、修正作業に追われていませんか。これでは、期待したほどの業務効率化は実現できません。実は、スキャン時に少し工夫を加えるだけでOCRの精度は向上します。さらに、AI技術を活用したAI OCRを導入することで、業務プロセス全体の効率化も可能です。
本記事では、手書き文字のOCR処理精度を上げる具体的な方法から、AI OCRの概要、導入するメリットまでを詳しく解説します。
OCRとは?
OCRとは、紙の文書に記載された文字をスキャナーなどで読み取り、コンピューターで利用できるテキストデータに変換する技術です。光学的文字認識とも呼ばれ、人間が目で見て文字を理解する作業を、コンピューターが代替します。
OCRを導入すれば、これまで手作業で行っていた伝票入力などの手間の削減が可能です。文書内のキーワード検索も可能になり、必要な情報を素早く見つけ出せます。
手書き文字のOCR処理精度を上げる方法

OCRを導入しても、手書き文字の読み取りミスが多くて修正に手間がかかる、という悩みは少なくありません。実は、認識精度の低さは、OCRにかける前の画像の品質が原因であることが多いです。
スキャン時に工夫をすることで画像の品質を向上させられるため、ぜひ試してみてください。
画像を鮮明にする
OCRの精度を向上させる第一歩は、読み取る画像をできるだけ鮮明にすることです。スキャンする際は、適切な解像度やカラーモードを選択することが精度向上につながります。一般的に、AI OCRは情報量が多いカラー画像が適しており、従来のOCRは文字と背景のコントラストが明確な白黒二値データが適しています。
その他にも、背景色が濃い書類は白に変更したり、薄い紙の裏写りを防ぐために裏に白い紙を当てたりする工夫も有効です。
ノイズを消す
スキャンした画像に含まれるノイズは、文字の誤認識を引き起こす大きな原因です。書類のわずかな傾きや背景の地紋、パンチ穴の影、文字に重なった印影なども、OCRにとっては文字と区別しにくいノイズです。このような不要な情報は、手動で修正するとなると大変な手間がかかります。
高性能なスキャナーには、画像の傾きを自動で補正したり、背景地紋やパンチ穴を塗りつぶしたりする機能が備わっています。このような画像処理機能で事前にノイズを除去すると、OCRが文字情報のみを正確に読み取れるようになり、認識精度が向上します。
読み取り解像度を上げる
OCRの精度は、スキャン時の読み取り解像度に大きく左右されます。解像度はdpiという単位で表され、数値が高いほど文字の輪郭や細部を鮮明にデータ化することが可能です。手書き文字や複雑な漢字を正確に認識させるためには、一般的に300dpi以上の解像度でスキャンすることが推奨されます。解像度が低過ぎると文字が潰れて、OCRが正しく読み取れません。
ただし、解像度をむやみに高くするとデータ容量が大きくなり過ぎるため、書類の種類に応じて適切な設定を見つけることが大切です。
AI OCRとは?
OCRとは、従来のOCR技術にAI(人工知能)を組み合わせることで、文字認識精度を大幅に向上させた技術です。AIのディープラーニング(深層学習)によって、人間のように文字の特徴を学習できるため、「ソ」と「ン」のような似た手書き文字でも高い精度で識別できます。
また、AIは書類のレイアウトを自動で解析できるため、請求書や納品書など、取引先ごとに様式が異なる非定型フォーマットも事前の設定なしで読み取ることが可能です。さらに、読み取りと修正を繰り返すことでAIが学習し、使えば使うほど認識精度が向上していく点も大きな特徴です。
AI OCRとOCRの違い
AI OCRと従来のOCRの大きな違いは、AIによる学習能力の有無にあります。従来のOCRは、あらかじめ登録された文字パターンと照合して認識するため、登録外のフォントや手書き文字の読み取りは苦手でした。
一方、AI OCRはディープラーニングによって自ら学習するため、多様な手書き文字を高精度で認識できます。また、従来のOCRでは帳票ごとに読み取り箇所を指定する必要がありましたが、AI OCRはレイアウトが異なる非定型帳票も自動で解析します。
AI OCRを活用するメリット
AI OCRを導入することで、文字認識の精度向上だけでなく、業務プロセス全体の変革も期待できます。例えば、読み取り後の目視チェックや修正作業を大幅に削減できるほか、紙媒体で保管していた書類のペーパーレス化も推進可能です。
さらに、RPAなどの他システムと連携させることで、データ抽出から入力までを自動化し、組織全体の生産性向上が期待できます。
チェックを簡略化できる
AI OCRは手書き文字でも高い精度で認識するため、読み取り後の目視による確認や修正作業を大幅に削減できます。従来のOCRでは誤認識が多く、結局すべての項目を目で見て修正する必要がありました。
一方、AI OCRは読み取り精度が高いため、人間によるチェック作業を、読み取り結果の信頼度が低い箇所に限定できます。多くのサービスには文字ごとの信頼度をスコアで表示する機能があり、担当者はスコアが低い部分だけを効率的に確認することが可能です。これにより、全件チェックという手間のかかる工程そのものが不要になり、データ入力業務全体の工数を大きく削減します。
ペーパーレス化を図れる
AI OCRは、取引先ごとに様式が異なる請求書のような非定型フォーマットも効率的に電子化できるため、ペーパーレス化を強力に推進することが可能です。紙の書類をデータ化すると、キャビネットや倉庫といった物理的な保管スペースが不要になり、管理コストが削減されます。電子化されたデータは、ファイル名だけでなく文書内のキーワードでも検索できるため、必要な情報を探す手間も大幅に省けます。
これにより、担当者以外でも情報にアクセスしやすくなり、テレワークのような多様な働き方にも対応可能です。また、紙媒体特有の紛失や盗難、経年劣化といったリスクを防ぎ、アクセス権限を設定することで情報管理の安全性も高まります。
他のシステムと連携できる
AI OCRは、RPA(Robotic Process Automation)などの外部システムと連携させることで、業務自動化の範囲を大きく広げます。AI OCRが帳票から抽出したテキストデータを、RPAが会計ソフトや販売管理システムへ自動で入力します。これにより、データ抽出からシステムへの転記まで、一連の定型業務を人の手を介さずに完結させることが可能です。
AI OCRは、読み取った情報が金額や品名といった何を意味するのかまで理解できるため、システム連携がスムーズです。このような連携は、ヒューマンエラーの防止と、従業員をより付加価値の高い業務へシフトさせることにもつながります。
物体検出の精度を向上させよう!
OCRによる文字検出の精度は、スキャン画像の鮮明化やノイズ除去といった工夫で向上します。さらに、AI OCRを活用すれば、高精度な手書き文字認識に加え、ペーパーレス化や他システム連携による業務自動化も可能です。
株式会社SPは、OCRとAIを連携させたソリューションで、お客様の現場に寄り添ったデジタル化を支援しています。お客様の声にならない要望をくみ取り、段階的なアプローチでDXを推進しますので、手書き帳票のデータ化など、どのようなことでもお気軽にご相談ください。