
はじめに
生成AIの実用化が進み、営業支援や社内ナレッジ共有など、AI活用を検討する企業が増えています。
特に、情報システム部門やDX推進担当者、AI導入を検討する現場担当者の間では、「どの言語モデル(LLM)を選ぶべきか」が重要な検討テーマとなっています。
外部サービスとして提供されるAPI型LLMを利用するか、自社管理下のサーバやクラウド上で運用するローカルLLM(オープンソースLLM)を構築するかで、コストやセキュリティ、開発体制が大きく変わります。
この記事では、ローカルLLMの特徴とAPI型LLMとの比較を通じて、導入目的に応じた最適な選び方を紹介します。
あわせて、どちらか一方を一律に推奨するのではなく、社内業務での利用を想定し、それぞれが選択肢となる条件を整理します。
ローカルLLMとは
ローカルLLMは、MetaやMicrosoftなどが公開している自由に利用・改変可能なモデルです。
自社のサーバーやクラウド環境上で稼働させることができ、機密情報を外部に出さずに活用できます。
オープンソースとして公開されているため、ライセンス費用がかからず、モデルの内部構造を理解した上でカスタマイズできるのも特徴です。
主なローカルLLMの例
| モデル名 | 提供元 | 特徴 |
|---|---|---|
| Llama 3 | Meta | 高精度・軽量で商用利用可能。 |
| Phi-3 | Microsoft | 小型ながら高精度。低コスト運用が可能。 |
| Mistral / Mixtral | Mistral AI | 高速処理・日本語対応が進化。 |
| Falcon 180B | TII (UAE) | 完全オープンソースで多言語対応。大規模処理にも対応可能。 |
ローカルLLMのメリット
- 自社データを活かした再学習が可能
独自データでチューニングし、業務に特化したモデルを構築できます。 - セキュリティを自社で完結
外部通信を行わない設計が可能で、情報漏洩リスクを抑えられます。
特に金融や医療など、機密性の高い情報を扱う業界では有効です。 - 長期的なコスト最適化
一度環境を構築すれば、トークン課金なしで運用可能です。
利用量が増えても追加コストが発生しないため、大規模な運用に向いています。
ローカルLLMのデメリット
- 初期投資が必要
GPUサーバーやクラウド環境の構築にコストがかかります。
特に大規模なモデルを運用する場合、高性能なGPUが必要となり、初期費用が高額になる可能性があります。 - 運用・保守の負担
モデル更新や推論最適化にはMLOpsの知識が必要で、トラブルシューティングやパフォーマンス改善も自社で対応する必要があります。 - 性能差
初期状態では商用モデルに劣ることもあり、精度向上には追加の学習が欠かせません。
API型LLMとローカルLLMの比較
API型LLMは「すぐに高精度なAIを使いたい企業」に向き、ローカルLLMは「自社要件に合わせてカスタマイズしたい企業」に適しています。
両者の主な違いは、運用場所とカスタマイズ性にあります。

API型LLMとは
API型LLMとは、OpenAI・Google・Anthropicなどが提供するクラウド型AIモデルです。
APIを経由で利用でき、モデル構築不要ですぐに導入できるのが最大のメリットです。
代表的なAPI型LLMの例
| モデル名 | 提供企業 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| GPT-4 | OpenAI | 高精度な言語生成・要約・コード生成が可能。ChatGPTとしても利用可。 |
| Gemini | マルチモーダル対応(画像・音声・テキストを統合処理)。Google製品との連携が容易。 | |
| Claude 3 | Anthropic | 長文処理と安全性に優れ、企業利用に適する。 |
| Command R+ | Cohere | 検索連携(RAG)に最適化され、社内ナレッジ連携に強い。 |
API型LLMのメリット
- 導入の即効性
APIキーを取得すればすぐに利用可能で、PoC(概念実証)や小規模実装に向いています。 - 高い精度と安定性
継続的な学習により、常に最新性能が維持され、広いタスクに高精度で対応します。 - メンテナンス不要
モデルの更新や改善はベンダー側が行うため、ユーザーの保守負担がほとんどありません。
API型LLMのデメリット
- 従量課金によるコスト変動
利用量が増えるとコストが予測しづらく、展開時に費用管理が課題となります。 - データ外部送信リスク
入力データがベンダーのクラウドを通過するため、セキュリティ上の制約が発生する場合があります。 - カスタマイズの制限
内部構造や学習データにアクセスできず、自社固有の知識を直接反映しづらい場合があります。
ローカルLLMの導入判断ポイント
ローカルLLM導入時は「利用目的」「データの取り扱い」「社内リソース」「コスト」の4つの観点で比較検討が必要です。
社内ナレッジ検索や特定業務の自動化など用途が明確な場合や、機密情報を扱う場合はローカルLLMが適しています。

ケース別おすすめモデル
用途・導入目的別のおすすめモデルを紹介します。
| シナリオ | LLM | おすすめモデル | 理由 |
|---|---|---|---|
| 小規模なAIチャット導入 | API型LLM | GPT-4 / Gemini | すぐに高品質な出力を得られる |
| 社内ナレッジ検索システム | ローカルLLM | Llama 3 / Phi-3 | 内部データ連携に強い |
| コストを抑えたAI文書要約 | ローカルLLM | Phi-3 | 軽量・低コストで運用可能 |
| Google Workspace連携 | API型LLM | Gemini | 組織内アプリ連携が容易 |
| 特定業務向けAI構築 | ローカルLLM | Llama 3 | 再学習により最適化が可能 |
さいごに
業務で生成AIを扱う機会が増える中で、目的や体制に合わせた使い分けが大切です。
まずはAPI型LLMで小さく試し、運用で得た知見をもとにローカルLLMで内製化や最適化を進めていく段階的な進め方が現実的だと考えています。
実際に使いながら理解を深めていくことで、プロジェクトに適したLLMが少しずつ見えてくるのではないかと思います。
お読みいただきありがとうございました。




