ホテル・旅館の集客改善|自社予約を増やすAI検索最適化と多言語CMS導入

はじめに

OTA(Online Travel Agency/オンライン旅行代理店)依存で手数料が重く、インバウンド向けの情報発信や問い合わせ対応に苦労するホテル・旅館に対し、宿泊情報を多言語CMSに集約してマスター化し、そこから検索向けの構造化データ・各コンテンツページ・FAQを一元的に出力することで、自社サイトからの直接予約比率の向上とフロント業務の負荷軽減を進められます。生成AIによる文案やチャット連携は、マスターが整ったあとの任意の拡張です。

本記事では、主に Drupal や WordPress といった CMS を前提に話を進めます。

この記事でお話しすること

本記事は、OTAを置き換えて自社サイトだけで集客する方法を説明するものではありません。じゃらんやBooking.comのような集客プラットフォームを自社で作る話でもありません。

目指しているのは、OTAの集客力はそのまま活かしつつ、宿泊情報を多言語CMSに集約し、自社サイト・問い合わせ対応・多言語発信を整えることです。下表の4つがゴールの整理です。自社サイトは「OTAに勝つための武器」ではなく、公式情報と直接予約の受け皿として、看板のまま放置されない状態にすることを想定しています。

目指すこと目指さないこと
直接予約の比率を少し上げる(OTAをやめる前提ではない)OTAを廃止して自社サイト一本で集客する
宿泊情報を1か所にまとめ、更新・多言語・問い合わせ対応を楽にするOTAの集客力・レビュー基盤に勝とうとする
検索・公式サイト・FAQで「公式の答え」を出せるようにする自社サイトが全チャネルの主役になる
フロントの定型的な問い合わせを減らす(まずFAQで、必要ならチャット)問い合わせ対応をAIだけに任せ、人の確認を省く

課題・背景

インバウンド需要が戻る一方で、宿泊施設の現場では集客と運用の両面でデジタル化が追いついていないケースが目立ちます。自社サイトはあるのに予約の大半がOTA経由、英語ページは機械翻訳のまま、電話は「駐車場はありますか」と鳴り続ける——こうした状態を、私たちは旅館・ホテルの刷新案件でよく見ます。

3つの課題に見えますが、根っこは同じです。客室の設備、周辺アクセス、ポリシー、多言語の紹介文が、Excel・紙のマニュアル・フロントの頭の中・OTAの管理画面に散らばっている。情報の置き場がバラバラなので、検索にもFAQにも英語ページにも、同じ内容を何度も手作業で直す必要が出てきます。

OTAそのものを否定する話ではありません。集客力、レビュー基盤、担当営業からのプラン設計や写真の見せ方のアドバイス——自社だけでは届かない売上と運用の知見をもらえるのは、無視できないメリットです。問題はOTAを使うこと自体ではなく、自社サイトが情報更新・多言語対応・予約導線の面で機能しておらず、手数料を払い続ける一方で直接予約に切り替わらない状態です。

  • 課題①:OTAへの過度な依存と利益率の圧迫。集客を予約サイトに頼り切っているため、売上の10〜15%近くが手数料として差し引かれる(プランやOTAによってはそれ以上になることもある)。その結果、自社サイトは単なる「確認用の看板」のまま残っている
  • 課題②:インバウンド客向けの「伝わらない」多言語対応。機械翻訳そのままの不自然な英語・中国語表記により、施設の魅力が正しく伝わらず、予約直前での離脱を招いている
  • 課題③:フロント業務を圧迫する定型的な問い合わせ。「駐車場の有無」「近くのコンビニ」「チェックイン前の荷物預かり」といった、Webサイトを読めば解決する質問への電話・メール対応にスタッフが忙殺されている

極論、自社サイトをやめてOTAに一本化する選択肢もあります。制作・保守の手間がなく、予約導線もOTAに集約できる。小規模な旅館でマーケ担当がおらず、そもそも自社からの予約がほとんど入っていないなら、短期的には合理的な判断です。ただし、予約のほぼ全件に手数料がかかり続ける、ブランドや世界観を伝える場所がなくなる、リピーターを自社で育てにくい、といったデメリットは残ります。看板だけのサイトに維持費だけかけ続けるのは得策ではありません。ちゃんと機能させるか、なくすと決めるか——どちらかに決めた方が、判断としてすっきりします。

自社予約を増やすには、いきなりチャットボットやJSON-LDだけを足すのではなく、宿泊情報のマスターを先に整える——この順番を踏まないと、どれだけAIを入れても現場の負担は減りません。

※JSON-LD(ジェイソン・エルディー)とは、Webページに埋め込む構造化データの形式です。Schema.orgの決まりに沿って施設名・客室・プランなどを記述し、Googleなどの検索エンジンが内容を正確に読み取れるようにします。DrupalのJSON-LDモジュールなどで出力するものと同じ考え方です。

手法の詳細・実践ステップ

宿泊施設の集客改善は、大きく3段階に分けて進めます。情報をCMSに集約する、マスターから検索向けに出す、必要に応じて問い合わせ対応や文案に広げる——この流れを押さえておけば、あとから予約連携を足すときにも迷いが少なくなります。

ステップ①:宿泊情報を多言語CMSにマスター化する

この記事の主役は、宿泊施設の情報をCMS上のフィールドとして持つ設計です。客室タイプ、アメニティ、食事プラン、チェックイン時間、駐車場の有無、荷物預かりの可否、周辺の駅やコンビニまで、ゲストが予約前に知りたい項目を構造化して登録します。

現場では「フロントは知っている」「パンフレットに書いてある」で済ませがちですが、Web・検索・FAQ・多言語ページが参照できる形になっていなければ、更新のたびに各所を手で直すことになります。CMSをマスターに据えると、駐車場の料金を変えたらサイト・英語ページ・FAQがまとめて追従する——こうした運用が可能になります。

CMSのコンテンツ種別とフィールド設計

宿泊情報は、1ページに全部書くのではなく項目の種類ごとにCMSへ分けて持ちます。表の各行は、DrupalのコンテンツタイプやWordPressのカスタム投稿タイプなど、CMS管理画面から登録するレコードに対応します。スタッフがRDBを直接操作する想定ではなく、管理画面のフォームから更新し、サイトやFAQがそのデータを参照します。電話で聞かれること、検索されやすいこと、予約前に知りたいことを1行ずつ漏れなく登録できるよう、下表のとおり分けておきます。

コンテンツ種別持たせるフィールド例
施設の名称・連絡先名称、住所、電話
チェックイン・営業時間チェックイン/アウト時刻、フロント対応時間、休業日
交通・アクセス最寄り駅、徒歩分数、送迎バスの有無と時刻
駐車場有無、台数、料金、事前予約の要否
周辺施設施設名、距離、徒歩分数
客室タイプタイプ名、所在、禁煙/喫煙
客室の広さ・寝具定員、ベッド形式、広さ
客室の設備露天風呂、展望風呂、バリアフリーなど
宿泊プランプラン名、適用期間、食事の有無、対象客層
よくある質問(FAQ)質問文、回答文(1問1答)
予約・キャンセル規定キャンセル料、変更期限 ※AI生成対象外
宿泊ルール子供料金、添い寝、禁止事項 ※AI生成対象外

コンテンツの使用先(例)

CMSに登録した内容は、1か所更新すれば次のような出力先に反映されます。施設や体制によって省略・統合してかまいません。

コンテンツ種別使用先の例
施設の名称・連絡先トップ、フッター、Googleビジネスプロフィール、Hotelスキーマ
チェックイン・営業時間施設案内、FAQ、チャット
交通・アクセスアクセスページ、Hotelスキーマ
駐車場アクセス、FAQ、チャット
周辺施設周辺案内ページ、チャット
客室タイプ客室一覧・詳細、OTAの客室説明
客室の広さ・寝具客室詳細、予約フォーム
客室の設備客室詳細、Roomスキーマ
宿泊プランプラン一覧、Offerスキーマ、AI文案の下書き元
よくある質問(FAQ)FAQページ、FAQPageスキーマ、チャット
予約・キャンセル規定予約確認画面、FAQ、チャット(参照のみ)
宿泊ルール宿泊約款、FAQ、チャット(参照のみ)

※表中の HotelRoomOfferFAQPage スキーマとは、JSON-LD(構造化データ)としてページに埋め込む際のデータ型を指します。

多言語は行ではなく、各コンテンツ種別に言語別フィールドを持つ横断的な設計です。DrupalやWordPressの多言語機能、ヘッドレスCMSの言語別フィールドなど、使っているCMSの仕組みに合わせて持てます。生成AIで下書きを作り、スタッフかネイティブチェックで確定するワークフローをCMS上に置くと、課題②の「伝わらない翻訳」を繰り返さずに済みます。

ステップ②:マスターから検索向けに出力する

CMSに整った宿泊情報は、自社サイト上で検索エンジンとAI回答に読み取りやすい形へ変換して出します。JSON-LD(構造化データ)はその出力のひとつで、これ単体が目的ではありません

構造化データ(JSON-LD)の自動生成

Hotel / LodgingBusiness に加え、客室ごとの Room、プランごとの Offer、よくある質問の FAQPage を、CMSフィールドから自動生成します。「〇〇駅から徒歩5分 露天風呂付き客室」のような具体的な検索に応えるには、駅名・アクセス分数・客室属性を本文に書くだけでなく、フィールドとして持っている必要があります。構造化データは、そのフィールド値を機械可読な形に落とし込む仕組みです。

CMSのフィールド値から、次のようなJSON-LDを生成するイメージです(値はすべてCMS側の項目に対応させます)。

{
  "@context": "https://schema.org",
  "@graph": [
    {
      "@type": "Hotel",
      "name": "箱根の温泉旅館 〇〇",
      "address": {
        "@type": "PostalAddress",
        "streetAddress": "神奈川県足柄下郡箱根町〇〇",
        "addressCountry": "JP"
      },
      "telephone": "+81-460-00-0000",
      "checkinTime": "15:00",
      "checkoutTime": "10:00",
      "description": "箱根湯本駅から徒歩5分"
    },
    {
      "@type": "Room",
      "name": "露天風呂付き客室",
      "occupancy": {
        "@type": "QuantitativeValue",
        "maxValue": 2
      },
      "amenityFeature": [
        {
          "@type": "LocationFeatureSpecification",
          "name": "露天風呂",
          "value": true
        },
        {
          "@type": "LocationFeatureSpecification",
          "name": "禁煙",
          "value": true
        }
      ]
    },
    {
      "@type": "Offer",
      "name": "カップル向け1泊2食付きプラン",
      "description": "夕食・朝食付き。露天風呂付き客室が対象。",
      "availability": "https://schema.org/InStock"
    },
    {
      "@type": "FAQPage",
      "mainEntity": [
        {
          "@type": "Question",
          "name": "チェックイン前に荷物を預けられますか?",
          "acceptedAnswer": {
            "@type": "Answer",
            "text": "フロントで15:00以前のお預かりを承っています。"
          }
        },
        {
          "@type": "Question",
          "name": "駐車場はありますか?",
          "acceptedAnswer": {
            "@type": "Answer",
            "text": "無料駐車場を10台分ご用意しています。事前予約は不要です。"
          }
        }
      ]
    }
  ]
}

実際のページでは <script type="application/ld+json"> タグ内にこのJSONを埋め込みます。DrupalのJSON-LDモジュールを使う場合も、CMSに入れた名称・住所・客室・FAQの値がこの形に変換されて出力されます。

コンテンツ種別ごとの公開ページ

旅館・ホテルの自社サイトは、トップ・客室・プラン・アクセス・FAQといった一般的な構成が多いです。CMSのコンテンツ種別も、このサイトのページ構成に合わせて設計しておくと運用しやすくなります。

「最寄り駅から徒歩5分」はアクセスページに、「露天風呂付き」は客室詳細に、「カップル向け」はプラン名や紹介文に——ゲストが知りたい情報は、すでにあるページのどこに載せるかが決まっています。CMSのフィールドをそのページに対応させておけば、更新は1か所で済み、JSON-LDも同じデータから出力できます。

多言語URLとメタデータ

言語はいきなり4言語以上そろえる必要はありません。最初は日本語と英語の2言語から始め、OTAの予約データやフロントでの対応実績を見て、中国人ゲストが多ければ中国語(簡体字)を、韓国人ゲストが多ければ韓国語を追加する——この段階的な進め方が現実的です。2言語でも翻訳のレビューが回る方が、4言語を機械翻訳のまま放置するより信頼につながります。

言語ごとにURLを分け、hreflangで相互参照を明示します。英語ページだけタイトルと説明文を最適化しても、日本語マスターとの内容乖離が起きると信頼を損ないます。CMSマスターから各言語を同期して出す設計にしておくと、あとから言語を足すときも管理が楽になります。

Googleビジネスプロフィールの住所・電話・営業時間とも、CMS上の基本情報と一致させておきます。NAP(名前・住所・電話)の不整合は、ローカル検索の評価を下げる要因のひとつです。

ステップ③:問い合わせ対応と文案(必要に応じて)

ステップ②までで、ゲストが知りたい内容はサイト上の各ページとFAQに載ります。課題③の電話・メールの定型問い合わせは、まずFAQを充実させるのが現実的な第一歩です。「駐車場はありますか」「チェックイン前に荷物を預けられるか」——電話で聞かれる項目をCMSのFAQに1問1答で登録し、客室・アクセス各ページからもリンクしておけば、予約前の不安の多くはサイト上で解消できます。

問い合わせチャットの選び方

24時間・多言語の問い合わせまで広げたい場合、自社でRAG(検索拡張生成)を一から構築する必要はありません。現場では、次のような選択肢がよく取られます。

方式概要向いている場面
FAQページ中心CMSのFAQをそのまま公開。FAQPageスキーマと併用小規模旅館、まず問い合わせを減らしたい
予約系SaaSのチャット予約番・tripla 等が提供する問い合わせ・チャット機能自社予約システム導入済み、手軽に始めたい
汎用チャットボットSaaS外部サービスにFAQやURLを登録し、ウィジェットを埋め込む開発リソースが少ない、まず試したい
自前RAG(任意)CMSエクスポートをナレッジ源にし、LLMで回答生成細かい制御や独自連携が必要な本番案件

いずれも、CMSをマスターにしておくと、FAQやエクスポートデータの更新がサイト・問い合わせ窓口の両方に効きます。チャットだけ先に入れても、情報が散らばったままでは回答の更新が追いつかず、現場の負担は減りません。

RAGを活用したAIチャット(自前構築の拡張例)

FAQや予約系SaaSのチャットで足りなくなった場合、CMSからエクスポートした情報をナレッジ源にしてAIチャットを自前で組む選択肢もあります。24時間・多言語でゲストの質問に答える仕組みとして、RAG(検索拡張生成)が使われます。質問が来たら、まずCMSのFAQや運用マニュアル、周辺ガイドから関連箇所を検索し、その内容をAIに渡してから回答を生成します。

「明日のチェックイン前に荷物を預けられるか」「近くにコンビニはあるか」といった課題③の問い合わせは、ステップ①でCMSに登録しておいた項目がそのまま回答の根拠になります。AIが施設にないサービスを勝手に案内するリスクを抑えつつ、フロントの電話対応を減らせます。周辺観光地や館内ルールはベクトルDBに格納し、更新のたびに再インデックスするパイプラインを組みます。CMSの内容が変わったらチャットの回答も追従する——この連動を設計に入れておくことが大切です。

AWSで組む場合、チャット側はLambdaやBedrockが CMSのDBを直接読むのではなく、CMSからエクスポートしたFAQ・客室・アクセス情報(JSON等)をS3に置き、そこから知識源をつくります。以下はその構成例です。旅館・ホテル全施設の標準導入パスではなく、SaaSでは足りない制御が必要になった段階の参考として読んでください。

パターン1:Bedrock Knowledge Bases(PoC・手早く試す)

Bedrock Knowledge Bases は、AWSが提供するRAGのマネージド機能です。S3に置いたドキュメントを自動で分割・ベクトル化し、質問に対して関連箇所を検索してからBedrockが回答を生成します。ベクトルDBや検索パイプラインを一から組まなくてよいのが特徴です。

要素役割
Drupal(CMS)FAQ・客室・アクセスを管理。cron等でJSONをS3へエクスポート
S3エクスポートファイルの置き場(faq.json など)
Bedrock Knowledge BasesS3の内容をインデックスし、検索+回答生成
API Gateway + LambdaサイトのチャットUIからKnowledge Basesを呼び出す
ゲスト(チャットUI)
  → API Gateway → Lambda
  → Bedrock Knowledge Bases(S3のFAQ等を検索 → Bedrockが回答)

PoCや小規模旅館の試験導入向きです。設定中心で始められますが、チャンクの分け方(テキストをどの単位で切って検索するか)や多言語の絞り込みなど、細かい制御はパターン2より自由度が低くなります。

パターン2:Lambda + OpenSearch + Bedrock(本番・細かく制御)

本番運用で「言語ごとに検索結果を絞る」「キャンセル規約は引用のみ」など細かく制御したい場合は、LambdaとOpenSearch ServerlessでRAGを自前組みします。パターン1と違い、ベクトルの保存・検索(OpenSearch)テキストの変換・回答生成(Bedrock) を分けて設計します。

要素役割
Drupal(CMS)マスター。更新時にJSONをS3へエクスポート
S3エクスポートファイルの置き場
Lambda(インデックス更新)S3のJSONを読み込み、Bedrockへ渡してベクトル化し、OpenSearchへ保存
OpenSearch Serverlessベクトルストア。FAQ等のベクトルと元テキストを保存し、類似検索する
Lambda(チャットAPI)質問の処理を司令。BedrockとOpenSearchを順に呼び出す
Bedrock(埋め込みモデル)テキストをベクトル(数値)に変換する。インデックス時・質問時の両方で使う
Bedrock(生成モデル)OpenSearchで拾った根拠テキストをもとに、自然な回答文を生成する
API GatewayチャットUIからの入口

【インデックス更新時】 CMSの内容が変わったあと、知識庫を最新にする流れです。

Drupal → S3(faq.json など)
           ↓
         Lambda(インデックス更新)
           ↓
         Bedrock(埋め込み)→ ベクトル
           ↓
         OpenSearch Serverless に保存(元テキスト + ベクトル + 言語タグ)

【質問時】 ゲストがチャットで質問したときの流れです。

ゲストの質問(例:「駐車場はありますか?」)
  → API Gateway → Lambda(チャットAPI)
  → Bedrock(埋め込み)→ 質問ベクトル
  → OpenSearch(検索)→ 関連テキストを取得(例:「無料駐車場10台」)
  → Bedrock(生成)→ 根拠テキストのみを使って回答文を作成
  → ゲストへ返す

Drupalの言語別フィールドごとにJSONを分け、OpenSearchへ言語タグ付きで保存すれば、/en/ のページからの質問には英語のチャンクだけを検索する、といった制御がしやすくなります。キャンセル規約などはインデックス対象から外すか、プロンプトで「根拠テキストの範囲内のみ回答」と縛れます。

観点パターン1(Knowledge Bases)パターン2(Lambda + OpenSearch)
向いている段階PoC、まず動かしてみたい本番運用、要件が固まっている
ベクトルストアAWSが裏で管理OpenSearch Serverless を明示的に使う
Bedrockの役割検索〜生成まで含めたマネージドRAG埋め込み(ベクトル化)+ 回答生成
構築の手間少ない多い
制御の自由度やや低い高い
CMSとのつなぎ方どちらも S3エクスポート(DB直結はしない)同左

生成AIによるプラン紹介文の作成

季節ごとの宿泊プランや近隣イベントに合わせた紹介文は、CMSの編集フロー(下書き → AI生成 → スタッフ確認 → 公開)に生成AIを組み込み、量産します。客室タイプ、食事の有無、ターゲット(カップル、ファミリー、ビジネスなど)の基本スペックを入れるだけで、各言語の下書きが出るようにします。

プロンプトでトーンと禁止事項(キャンセル料の数値を勝手に書かない、など)を制御し、出力は必ずスタッフ承認を経てから公開します。単なる機械翻訳ではなく、「露天風呂で疲れを癒す」が英語圏のゲストに自然に伝わる表現へ寄せる——こうした文化的なニュアンスの調整を、生成と人のレビューを組み合わせて回します。

自社予約導線と技術構成

検索最適化とCMS整備だけでは、OTAからの完全な切り替えは起きません。サイトに来てもらっても、ゲストの多くは「公式サイトの方が高いのでは」と感じがちです。OTAのクーポンやポイント還元は画面に大きく出る一方、自社サイトは定価に見えやすい。価格比較サイトでもOTA経由の料金が先に目に入るため、「安い予約はOTAで」という印象が残ります。

だからこそ、予約する理由を価格面から先に設計します。ベストレート保証(他チャネルより安ければ差額対応)、OTAに出していない限定プラン、会員価格、連泊割や朝食付きなど自社だけの特典——安さそのものでも、ポイントではなく特典で差をつけてもよいです。手数料の10%前後を還元する形で直接予約を少し安くする施設もあります。検索やFAQでサイトに送る前に、この不安を潰しておく必要があります。

CMSと予約連携の役割分担

在庫・料金はCMSに持ちません。複数のOTA(楽天トラベル、じゃらんnet など)を併用する現場では、在庫の正はサイトコントローラーが担い、自社サイトの予約画面は自社予約システムが担います。CMSは客室説明・FAQ・多言語だけを担当し、在庫同期の回路には入りません。

サイトコントローラー(ねっぱん、手間いらず など)とは、複数OTAの在庫・料金を一元管理するクラウドサービスです。自社予約システム(予約番、tripla など)とは、公式サイトから直接予約を受け付けるブッキングエンジンで、自社サイトにはウィジェットまたはAPIで埋め込みます。両者は別製品で、管理画面から連携設定します。

サイトコントローラーと自社予約システムは別製品です。管理画面で部屋タイプを紐づけて接続し、楽天で予約が入ればサイトコントローラー経由で予約番側の残室も減る——こうした同期は各社の連携機能が担い、Drupal開発者が在庫APIを書く必要はありません。

ウィジェット埋め込みとは、自社予約システムが提供する予約フォームを客室ページに貼り付ける方法です。空室検索から予約確定までを自社予約システムに任せ、在庫の更新はサイトコントローラーがOTAと同期します。API連携は、自社サイトのデザインのまま空室・料金を表示したい場合の選択肢で、開発・保守の負荷はウィジェットより高くなります。図のとおり、客室ページではCMSの説明・写真と、自社予約システムの予約フォーム(ウィジェットまたはAPI)を並べて表示します。予約受付は自社予約システムが処理し、在庫同期はサイトコントローラーがOTAと連携します。

実務でのおすすめ(旅館・小規模ホテル)

  1. 空室・料金のマスターはCMSではなく、サイトコントローラーに一本化する
  2. 自社サイトの予約画面は自社予約システムのウィジェット埋め込みまたはAPIで表示する
  3. 説明・FAQ・多言語はCMS(Drupal)で管理する
  4. CMS・自社予約システム・OTAのあいだで在庫を二重管理しない
  5. 在庫不一致のアラートは、サイトコントローラーの管理画面で監視する

この記事でいちばん先に決めるのはCMS選定とコンテンツ設計です。小〜中規模の旅館・ホテルでは、DrupalやWordPressなど、スタッフが管理画面から更新できるCMSで足りることが多いです。制作会社のパッケージや予約システム付きサイトから始め、コンテンツ種別の設計だけ先に揃える進め方もあります。

Next.jsのようなフロントエンドの全面刷新は、多言語対応や予約導線をゼロから組み直す場合の一例にとどまります。初期開発・保守のコストは一般的なCMSサイトより高くなりやすいので、まずCMSでマスター化し、必要になってからフロントを分離する段階的な進め方が現実的です。

レイヤー例(規模・体制に応じて選ぶ)役割
CMS(本記事の中心)Drupal、WordPress、microCMS など宿泊情報マスターの登録・更新、多言語フィールド、JSON-LDの元データ
公開サイトCMSのテーマ/テンプレート、制作会社パッケージ ※刷新時のみ Next.js など客室・プラン・アクセス等の各ページ、構造化データの出力
サイトコントローラーねっぱん、手間いらず、TL-リンカーン など複数OTAと自社予約の在庫・料金を一元同期
自社予約システム予約番、tripla など自社サイトの空室・料金表示・予約受付(ウィジェット / API)
AI連携(任意)生成AI API、チャットボットSaaS、Bedrock などプラン紹介文の下書き、高度な要件時のRAGチャット

まとめ

本記事が目指しているのは、OTAをやめることでも、自社サイトだけで集客することでもありません。宿泊情報をCMSに集約し、自社サイトを公式情報と直接予約の受け皿として整える——冒頭の4つを、次のように押さえておけば十分です。

直接予約の比率を少し上げる。 OTAの集客力はそのまま活かしつつ、客室・アクセス・FAQと予約導線を整えることで、公式サイトからの予約が増えやすくなる余地があります。サイトコントローラーと自社予約システムで在庫を一本化し、CMSに在庫を持たない構成が前提です。

宿泊情報を1か所にまとめる。 CMSをマスターに据えれば、更新・多言語・問い合わせ対応のたびにExcelやOTA管理画面を行き来する手間を減らしやすくなります。

検索・公式サイト・FAQで「公式の答え」を出す。 構造化データ・各コンテンツページ・FAQを同じCMS由来の情報から出すことで、検索結果とサイト本文がずれにくくなります。チャットを足す場合も、同じマスターを参照する設計にします。

フロントの定型的な問い合わせを減らす。 まずFAQで一次対応し、必要なら予約系SaaSやチャットボットを検討します。人の確認を省くのではなく、駐車場や周辺施設といった電話問い合わせの負担を軽くする方向です。

施設の規模やOTA依存度によって効果の出方は異なりますが、「説明はCMS、在庫はサイトコントローラー、予約画面は自社予約システム」と役割を分けたうえで進める——この順番を押さえておくと、看板だけのサイトにせず、公式の受け皿として育てていく土台になります。

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