生成AI活用事例集|営業支援・画像生成・医療DXで業務を変えた実装プロジェクト
「業務効率化に生成AIを活用したいが具体的なイメージが持てない」という企業に向けて、SPが実際に手がけた営業支援AIエージェント・サムネイル自動生成システム・医療問診OCRの3プロジェクトを取り上げます。業種や課題の性質が異なる事例を通じて、生成AIが現場にどう組み込まれ、何を変えてきたかを伝えます。
はじめに
「自社の業務にどう使えばよいかわからない」「PoC止まりで本番に乗せられない」。生成AIへの関心が高まる中で、こういった声はまだ多いです。SPはDXコンサルティングを通じて、業種・規模・課題の性質が異なる複数の現場で生成AIシステムを構築してきました。
代表的な3つのプロジェクトについて、それぞれの背景・システム概要・成果を取り上げます。
事例 01|営業企画・営業支援領域のAIエージェント構築
分野: 新規事業支援 / DXコンサルティング
背景・課題
営業現場では、担当者が顧客への提案や上長への報告のたびに、営業日報・業務日誌・顧客管理システムなど複数のデータソースを手動で参照する作業が常態化していました。情報は社内システムに蓄積されているのに、横断的に検索する手段がなく、活用しきれていません。担当者交代時の引き継ぎコストや、マネジメント層の状況把握にかかる工数も無視できない問題でした。
システム概要
AIエージェントが業務日誌や営業日報を自動解析し、分散する情報を横断的に統合して営業活動やマネジメント業務に使える形に変換するシステムを開発しました。社内データをナレッジベースとして構造化し、担当者が自然言語で質問を投げるだけで、カルテ形式の顧客サマリやターゲットリストが生成されます。
RAG(Retrieval-Augmented Generation)アーキテクチャを採用しています。「A社の直近の商談状況を教えて」「このエリアで未フォローの見込み顧客を整理して」といった問いに対して、AIが複数データソースを参照した上で根拠のある回答を返します。キーワード検索と違うのは、問いの意図を解釈した上で情報を整形して出力する点です。
成果
顧客情報の検索・分析や資料作成、マネジメントのための状況把握にかかる手間が減りました。担当者が複数システムを渡り歩いて情報を集める時間がなくなり、商談準備や戦略立案に使える時間が増えました。情報の属人化が解消される副次効果もあり、チーム全体の底上げにつながっています。
事例 02|サムネイル自動生成システムの構築
分野: 新規事業支援 / DXコンサルティング
背景・課題
ECサイト運営や広告クリエイティブ制作において、商品ごとのサムネイル画像を作成・更新する作業は継続的に発生します。デザイナーや担当者が毎回手動でレイアウトを調整し、複数パターンを試しながら選定するプロセスは、人手と時間を消費します。さらに問題なのは、どのデザインが実際のクリック率につながるかが感覚に頼りがちで、改善の根拠が不明確なまま運用されていた点です。
システム概要
入力された画像・キャッチコピー・商品情報をもとに、サムネイル画像の候補を10〜20枚程度自動生成するシステムを構築しました。生成後の画像は明るさ・コントラスト・テキストレイアウトの調整が可能なUIも提供しており、担当者が最終微調整を行いやすい設計にしています。
技術スタックにはPython・OpenCV・pillow・NumPy・scikit-imageを採用し、画像処理パイプラインを構成しました。加えて、実際に利用されたサムネイル画像のパフォーマンスをGoogle Analyticsのクリック率データと紐付けて評価する仕組みも導入しています。どのデザインパターンがCTRを高めるかを定量的に蓄積し、次回の生成パラメータ調整に活用するフィードバックループがあります。運用を重ねるほど精度が上がる構造になっています。
成果
クリエイティブ候補の生成にかかるデザイン工数が削減され、クリック率ベースの定量的な効果測定ができるようになりました。感覚ではなくデータに基づいたクリエイティブ改善サイクルが動き始めており、成果も上がってきています。
事例 03|お薬手帳の画像から薬剤情報を読み取るシステム(医療分野)
分野: 医療 / DXコンサルティング
背景・課題
医療機関のWEB問診システムでは、患者が服用中の薬剤情報を自分で入力する場面があります。薬の名前は難読なものが多く、正確な入力が難しいため、入力ミスや入力漏れが生じやすいです。患者の負担が大きいだけでなく、入力内容の正確性が担保されにくいことは医療の質にも直結します。問診担当スタッフが補正・確認を都度行う必要があり、運用コストも高くなっていました。
システム概要
患者がWEB問診入力画面からお薬手帳の写真やアプリのスクリーンショットをアップロードすると、自動で薬剤情報が抽出され、問診画面に反映されるシステムを開発しました。手入力が不要になるため、患者の負担と入力ミスの両方を同時に解消します。
Google Cloud AIによる画像テキスト認識(OCR)でお薬手帳から文字情報を抽出し、OpenAI APIが薬剤名の識別と整形を行う2段階の処理構成を採用しました。ここで難しいのは、写真の角度や照明によるばらつき、薬名の表記揺れへの対応です。設計段階からこれらの条件を考慮することで、実運用に耐える精度と堅牢性を確保しています。
成果
患者の入力負担が減り、薬剤情報の入力精度が上がりました。問診担当スタッフによる確認・修正作業も減っており、患者・医療スタッフの双方にとって体験が改善されています。
生成AI活用を進める上での注意点
複数のプロジェクトを通じて見えてきた、導入時に詰まりやすいポイントを挙げておきます。
- データ品質の整備が先決:社内データを生成AIに接続しても、データ自体の品質が低ければ精度は上がりません。日報の入力が形骸化していたり、フォーマットが統一されていなかったりする場合は、データ整備と入力ルールの見直しをセットで行う必要があります。
- PoC環境と本番環境のギャップを過小評価しないこと。PoC段階で精度が出ても、本番データ・本番環境では異なる結果になるケースがあります。医療OCRであれば手書きや低解像度画像への対応、画像生成であれば実際の商品数・ラインナップの多様性への対応など、本番特有の条件を早期にテストへ組み込んでおく必要があります。
- 「完全自動化」を目指しすぎないこと。最終確認・調整のポイントをどこに残すか、異常出力が発生したときの対処フローをどう設計するかを、初期段階で業務部門と合意しておくことが運用定着につながります。AIはあくまでツールであり、業務を熟知した担当スタッフが最終確認を担う体制があって初めて、安全・安定した運用ができます。